2016年1月17日日曜日

磁石磁界をコイルで遮断する実験(つづき)

どの程度の磁束密度を与えれば磁石の磁束を動かせるのか。
それを確認するための基礎実験。

実験装置


ヒートシンクの上にポリイミドテープを貼り付けて絶縁をした上に回路をつくった。



 菊水の直流安定化電源。
40V9Aまで使えるのだが、上の回路で9Aの上限があるので、今回使用する電圧はせいぜい20Vまで。


 秋月で購入したDDSファンクションジェネレーター。
出力電圧が20Vまで設定できるが、MOS-FETのON/OFFには12Vで十分だった。


 テクトロのオシロスコープ


測定1


つくった回路とコイルをつないで、特性を測定。
出力コイルには25Wの電球が負荷としてつながっている。



 結果は、このグラフのようになった。


測定2


次に、コイルに流れた電流の大きさによって、出力コイルに磁束密度の変化が生じるかを測定する。
それで、9Aまで流してみたものの、出力コイルに電圧は確認できなかった。コイルによって作られる磁界(計算上の磁束密度は最大16.5[mT]となる)が弱いようだ。

さて、どうしようか。。。



オシロスコープで電流波形をよくみると、MOS-FETのOFFタイミングで鋭いパルスが出る。
都合の良いことに、ピークは37A以上になることがわかった。(画像の上側、Ch1)


出力コイルにも鋭いパルスが(画像の下側、Ch2)出ている。つまり、瞬間的にマグネットの磁束が動かされているということだ。

制約ばかりの実験装置だが、思わぬところで実験が継続できた。


結果的に、この実験装置では20A以上でマグネットの磁束がカットされた状態になり、出力が出てくることが確認できた。

しかも、電流の波形に似たような形で出力波形が現れること、
このコイルとフェライト磁石の組み合わせだと、45A程度で最大3.6Vまで出力があり、これ以上電流をUPしても、出力は上がらないことが確認できた。45[A]の場合、計算上84[mT]の磁束密度になる。

磁石をネオジウムに交換して同様の実験を行ってみた。
この場合は、45Aでは少し低めの3.0Vの出力となり、62A程度で3.6Vとなり、それ以上UPしない結果となった。62[A]のときは、116[mT]になるはず。
ネオジウムはフェライトよりも磁束密度が高いため、より大きなエネルギーが必要だということが言えそうだ。

結論

磁石の作る磁界を90度横方向からカットするためには、磁石の磁界と同程度の磁界を投入しなければならない。
フェライト磁石だと、おおよそ40[mT]必要になる。
そして、この実験でつかったコイルなら、電流を21[A]以上流す必要があるということ。






2016年1月12日火曜日

磁石の磁界をコイルで遮断する実験

SQM/VTAというフリーエネルギー装置の原理的なものが少しだけ見えてきたような気がしたので、磁石が作っている磁界をコイルで遮断する実験を行ってみることにした。

実験の概要


図1.電流OFF時
上下2つの磁石を4センチ間を空けて配置する。その隙間の左右にコイルを向かい合わせになるように配置する。

図2.電流ON時
次に、コイルにパルス電流を流して強力な磁界を生じさせ、上の磁石N極から下の磁石S極へと直進していた磁束を四方八方へと拡散させる。この結果、中心の上下方向に通る磁束密度を減少させる。

この電流のONとOFFを繰り返すことで、2つの磁石にはさまれた中心部分では、上下方向の磁束密度が上昇・下降を繰り返すことになる。この中心部分に別のコイルを置けば、磁束密度の増減に感応したコイルに電流が流れるはずである。

ひとつ前のブログ記事にも書いたが、コイルの作る磁界は、おそらく磁石のつくる磁界と同じかそれ以上でなければ、上に説明したような現象は起きないだろう。だから今回は、コイルに40Aを流したい。

直径0.6ミリ程度の細い銅線を使っているので、そこに40Aも電流を流すと銅線が熱で溶けてしまう。だから、細いパルス状の信号をコイルに与えることにする。

コイルの選定

コイルは、以前つくったものを流用することにした。
外径38ミリの塩ビパイプ、長さ40ミリに、UEW0.6ミリを120回巻いたもの。
磁石の磁界を拡散させるコイルは2つ必要なので、これと同じものをもうひとつ作る。
これらはEXコイルのAとBという名前をつけておくことにする。

これとは別に、磁石の中心に配置する出力用のコイルが必要だ。これも以前つくったものを流用する。
同じ塩ビパイプにUEW線1.0ミリを24回巻いたもの。
これはPWコイルとする。

【コイルの特性】

EXコイルA
  • 直流抵抗:.098[Ω]
  • インダクタンス:501[μH]
  • 磁束密度:1.5[mT](直流0.8Aを流して、コイル端の断面中心部で測定)

EXコイルB
  • 直流抵抗:.098[Ω]
  • インダクタンス:530[μH]
  • 磁束密度:(未計測)

PWコイル
  • 磁束密度:0.2[mT](直流0.8Aを流して、コイル端の断面中心部で測定)
EXコイルA+EXコイルBの組み合わせ時
(コイルを同一軸線上で向かい合わせに置き、40ミリの離隔距離をとる。無誘導巻きに近い形)

  • インダクタンス:910[μH]
  • 磁束密度:1.0[mT](直流0.8Aを流して、外側、向かいあっていないコイル端の断面中心部で測定)
※EXコイル組み合わせ時は、配置が無誘導巻きコイルに近いため、互いのコイルが発生する磁束がぶつかり合い、弱めあう。そのため、インダクタンスが下がり、磁束密度も低下したと考えられる。)

印加パルスの計算

上記のEXコイル組み合わせ時には、0.8Aで1mTの磁束密度だった。磁束密度を50[mT]まであげるためには、50倍、つまり40A必要となる。直流抵抗が、0.98+0.98=1.96[Ω]になるので、直流だと80[V]の電圧をコイル両端に印加する必要がある。
しかしながら、手持ちの直流電源装置は最大40Vまでしか対応できないので、とりあえず、いけるところまでとしておく。よって電流は半分の20Aとなる。

コイルには1回のパルスで十分なエネルギーを蓄える必要があるので、充電に必要な時間を計算すると、インダクタンスL=910uHと抵抗R=1.96Ωから、1.87[ms]となった。これがパルスのON時間となる。

次にパルスの周期。
コイルにつかったUEWワイヤーの安全電流は0.8[A]。直流の場合の電流と時間の積がパルスを与えたときの電流と時間の積が同じであれば、発熱による断線は起きない。
電流20[A]で約2[ms]流すので、0[A]を何秒にすればいいかを計算すればよい。
すると、パルスの周期が0.0454秒となる。これは周波数22Hzである。
パルスのデューティー比は4%となる。


回路図


コイルにパルスを供給するための回路を作成。
MOS-FETでスイッチング動作させる簡単なものとなった。

コイルで発生する逆起電力からMOS-FETを保護するためにFRDとSBDをつけた。
しかし、手持ちのダイオードが少なかったために、最大電流は9[A]までとなってしまった。

MOS-FETのソースにつけた0.1[Ω]抵抗で電流を測定する。読みとった電圧値を10倍すれば電流が分かる。






2016年1月4日月曜日

コイルの磁束が弱すぎた

テスラメーターで、コイルや磁石の磁束密度を測定してみた。

フェライト磁石が、異方性磁石の大きいもので70~100[mT(ミリテスラ)]、等方性磁石の小さいもので40[mT]だった。
ちなみにSweet氏が資料に500[G(ガウス)]と書いているので、バリウムフェライト磁石は50[mT]だ。

いままで実験用に作ってきたコイルをひととおり調べてみた。
直流で銅線の安全電流程度を流して静的な磁束密度を測定したのだが、巻数の多いものでも3mT程度で大半は1mT以下だった。

この結果からSQM/VTA装置の実験としては、どのコイルも貧弱すぎた感じがする。
これでは、出力が得られないのも当然だろう。


ちょっと調べてみたのだが、パルス磁場によるフェライト磁石用着磁装置は、1000[V]、1000[uF]で大電流を流して15[kOe(キロエルステッド)]以上の磁界を作るようだ。
静的磁場による着磁の場合は自発保持力の1.5倍というから、5kOe以上。

空芯コイルなので、1[Oe]が1[G](ガウス)で、これは0.1[mT(ミリテスラ)]に相当するから、5kOeは500[mT]ぐらい。

ここまで強い磁石は必要ないけれど、磁石と同程度必要だとするなら、最低でも40[mT]=400[Oe]のコイルが求められる。

したがって、今のコイルの磁束密度を40倍にする必要があり、そのためには電流を40倍にするか、コアを入れるかしなければならないということだろう。


それから、パルス着磁の場合、1回のパルスが500[J](ジュール)のエネルギー量になる。
これも、コイルを作る上で押さえておいたほうがよさそうだ。