前回、リードスイッチの位置で電流が減少することを書いたが、その現象についてもう少し検証してみた。
進み角とは、リードスイッチの位置を、軸とコイルの中心を結んだ直線を基準線とおいて、
そこから回転方向と反対方向となる位置にリードスイッチを置いた場合と定義した。
この画像のようにリードスイッチを置いたときを基準とし、
下の画像のように進み角をつける。
その進み角を大きくした場合や、小さい場合に電流はどのように変化するのだろうか。
以下の実験は、電源電圧はDC10V固定で調べてみた。
■基準位置の場合
まず、基準線上にリミットスイッチを配置した場合。
オシロスコープ画像の上の線(CH1)が電流波形で、下の線(CH2)が電圧波形。
黄色の矢印①のところで、リードスイッチがONとなり、コイルに電流が流れはじめる。
注目すべき点は、コイルに磁石が近づいてくる影響で電圧が波を打つところ。
ONの10ms前から電圧が上昇し、ON直前で0V近くになっている。ここは、この後のケースと比較していくが、進み角がかわると当然ながら波のポジションも変わってくる。
そして、この電圧のポジションによって、電流波形も大きく変わってくる。
この基準位置の場合は、ON直後の電流の立ち上がり(オレンジ色矢印部分)で頭を押さえつけるような形となり、全体としてスリムな波形となっている。
■進み角が適度にある場合
つぎは、進み角をつけた場合。電流波形が大きく変化した。ON期間の中間近くで頭を押さえつけられたような形(オレンジ色部分)で、山が2つに分かれたように見える。その結果、電流はとても小さくなっている。
黄色矢印②に注目すると、電圧のポジションは、電源電圧とほぼ同じ10VのあたりでONになっている。
■進み角を過度につけた場合
さらに進み角をつける。このとき、モーターは異音を出しながら回転している。電流波形がさらに変化した。さきほどの2つに分かれていた山はひとつになった。ON直後から順調に電流が増大していくが、途中から腰折れしたように電流が現象している。(オレンジ色矢印)
黄色矢印③を見ると、電圧ポジションは山のピークから下り始めた直後でONになっている。
■考察
進み角のつけ方で、電流の波形が変わっていく様子が分かった。
以前にも書いたが、コイルに近づいてくるマグネットによって発電現象が起きている。それが、コイルに流れる電流を減少させていることがはっきりとしてきた。
しかも、発電現象は波のように変動しているので、その波のポジションで電流を抑制するタイミングが変わり、電流減少効果が変わってくることも分かった。
ここにはデータをあげなかったが、電流を限りなく0Aに近づけることも別途試してみた。
それは、進み角を適度な状態にしたままで、Duty比を変化させるためにリミットスイッチをモーターに近づけたり遠ざけたりした。
かぎりなく0に近づけた結果として、回転速度が落ちることになった。
このことから、ある程度電流が流れることで、回転が維持されるということがわかった。摩擦などで発生する機械的なロスを補うだけの電流を流して回転力を与えなければならないようだ。
だから、テネモスのモータは電流がゼロになると謳っているが、現時点では電流がゼロになるということはありえないように思う。
それから、電圧波形に緑色の△をつけた部分について、述べなければならない。
この三角印は、BEMF、つまり、コイルがOFFした瞬間に発生する逆起電力である。
これは、電流が多く流れると三角も大きくなり、電流が少ないと三角も小さくなる。
BEMFは、コイルに蓄積したエネルギーが放出されることで起きるものだから、当然のことながら【進み角を適度につけた場合】が、もっとも小さな三角となった。
最後の【進み角を過度につけた場合】に発生した異音は、コイルのONが早すぎるために、コイルに近づいてくる磁石との間に反発力が発生しているからだと思われる。
磁力がぶつかっているのだから回転速度も落ちると思ったが、不思議とそれほど低下しなかった。
ぶつかった衝撃で回転が低下する分、通りすぎる磁石を押し出す力も増えているのか?
つまり、磁力線が拮抗しあうことで、お互いの磁力がさらに強められているのではないだろうかという疑問が起きた。(磁力の増力作用の存在)
■今後
リードスイッチは、接点のチャタリングがあることのほかに、磁石の磁力線に感応してON/OFFしているため磁石との位置関係がわかりにくくなっている。だから今回のテーマである進み角の実験も厳密さにかけるのではないかと思う。
よって、リードスイッチを半導体スイッチに変更して検証してみたい。
あわせて、リレーについても半導体スイッチに更新することも考えている。