2016年6月18日土曜日

進み角と電流の減少について

前回、リードスイッチの位置で電流が減少することを書いたが、その現象についてもう少し検証してみた。

進み角とは、リードスイッチの位置を、軸とコイルの中心を結んだ直線を基準線とおいて、
そこから回転方向と反対方向となる位置にリードスイッチを置いた場合と定義した。

この画像のようにリードスイッチを置いたときを基準とし、

下の画像のように進み角をつける。

その進み角を大きくした場合や、小さい場合に電流はどのように変化するのだろうか。

以下の実験は、電源電圧はDC10V固定で調べてみた。

■基準位置の場合


まず、基準線上にリミットスイッチを配置した場合。
オシロスコープ画像の上の線(CH1)が電流波形で、下の線(CH2)が電圧波形。
黄色の矢印①のところで、リードスイッチがONとなり、コイルに電流が流れはじめる。

注目すべき点は、コイルに磁石が近づいてくる影響で電圧が波を打つところ。
ONの10ms前から電圧が上昇し、ON直前で0V近くになっている。ここは、この後のケースと比較していくが、進み角がかわると当然ながら波のポジションも変わってくる。
そして、この電圧のポジションによって、電流波形も大きく変わってくる。

この基準位置の場合は、ON直後の電流の立ち上がり(オレンジ色矢印部分)で頭を押さえつけるような形となり、全体としてスリムな波形となっている。

■進み角が適度にある場合

つぎは、進み角をつけた場合。

電流波形が大きく変化した。ON期間の中間近くで頭を押さえつけられたような形(オレンジ色部分)で、山が2つに分かれたように見える。その結果、電流はとても小さくなっている。

黄色矢印②に注目すると、電圧のポジションは、電源電圧とほぼ同じ10VのあたりでONになっている。

■進み角を過度につけた場合

さらに進み角をつける。このとき、モーターは異音を出しながら回転している。

電流波形がさらに変化した。さきほどの2つに分かれていた山はひとつになった。ON直後から順調に電流が増大していくが、途中から腰折れしたように電流が現象している。(オレンジ色矢印)

黄色矢印③を見ると、電圧ポジションは山のピークから下り始めた直後でONになっている。

■考察


進み角のつけ方で、電流の波形が変わっていく様子が分かった。

以前にも書いたが、コイルに近づいてくるマグネットによって発電現象が起きている。それが、コイルに流れる電流を減少させていることがはっきりとしてきた。
しかも、発電現象は波のように変動しているので、その波のポジションで電流を抑制するタイミングが変わり、電流減少効果が変わってくることも分かった。


ここにはデータをあげなかったが、電流を限りなく0Aに近づけることも別途試してみた。
それは、進み角を適度な状態にしたままで、Duty比を変化させるためにリミットスイッチをモーターに近づけたり遠ざけたりした。
かぎりなく0に近づけた結果として、回転速度が落ちることになった。

このことから、ある程度電流が流れることで、回転が維持されるということがわかった。摩擦などで発生する機械的なロスを補うだけの電流を流して回転力を与えなければならないようだ。

だから、テネモスのモータは電流がゼロになると謳っているが、現時点では電流がゼロになるということはありえないように思う。


それから、電圧波形に緑色の△をつけた部分について、述べなければならない。
この三角印は、BEMF、つまり、コイルがOFFした瞬間に発生する逆起電力である。
これは、電流が多く流れると三角も大きくなり、電流が少ないと三角も小さくなる。
BEMFは、コイルに蓄積したエネルギーが放出されることで起きるものだから、当然のことながら【進み角を適度につけた場合】が、もっとも小さな三角となった。


最後の【進み角を過度につけた場合】に発生した異音は、コイルのONが早すぎるために、コイルに近づいてくる磁石との間に反発力が発生しているからだと思われる。
磁力がぶつかっているのだから回転速度も落ちると思ったが、不思議とそれほど低下しなかった。
ぶつかった衝撃で回転が低下する分、通りすぎる磁石を押し出す力も増えているのか?
つまり、磁力線が拮抗しあうことで、お互いの磁力がさらに強められているのではないだろうかという疑問が起きた。(磁力の増力作用の存在)


■今後

リードスイッチは、接点のチャタリングがあることのほかに、磁石の磁力線に感応してON/OFFしているため磁石との位置関係がわかりにくくなっている。だから今回のテーマである進み角の実験も厳密さにかけるのではないかと思う。
よって、リードスイッチを半導体スイッチに変更して検証してみたい。
あわせて、リレーについても半導体スイッチに更新することも考えている。







2016年6月12日日曜日

リードスイッチの位置と消費電力の減少

リードスイッチの位置がコイルに電流を流すタイミングや時間を変更する大きなパラメータになる。


リードスイッチをローターから遠ざけると、リレーがONする時間が短くなる。すなわちDuty比が下がる。
逆にリードスイッチをローターに近づけると、リレーがONする時間が長くなる。Duty比は上がり、電流も多く流れることになる。


これとは別に、モーターの中心軸からコイルの中心に伸ばした線を基準にして、
ローターの回転方向側に移動させる。これを遅れ角と呼ぶことにする。

こうすると、コイルに電流が流れるときには、ローターのマグネットがコイル上空を通りすぎて、離れていこうとする状況にある。このときコイルに発生した磁界がマグネットを押し出す力にはなるが、角度を大きくすると、マグネットに力が十分にかからなくなり、電流が無駄になりやすい。
回転速度が遅い起動時には、有効だった。

逆に、基準線よりも回転方向と逆に移動させる。これを進み角と呼ぶことにする。
こうすると、ローター上のマグネットがコイルに近づいてくる段階で、コイルの磁界が発生するため、マグネットとコイルの間の反発力が、ブレーキとなってしまう。もちろんマグネットがコイルの中心を通過したあとは、反発力が回転を加速させる。
回転速度が遅い場合にこの進み角をとると、確実に減速して停止する。
しかし、回転速度が十分に大きくなっていると、ブレーキ効果は瞬間的なものになるため停止することはない。もちろん、角度が大きすぎるのは問題があり、振動が増え停止に至る。

このモーターはリレー式の駆動系となっているので、リレー接点が完全にONとなるまでに数ミリ秒のタイムラグが存在する。このタイムラグを取り除き、モーター全体の効率をよくするためは進み角を少しだけつけるのが有効となる。

以上のポイントを押さえた上で、実験を繰り返した結果、コイルの電流が激減することが分かった。

このオシロスコープの写真は、CH1がコイル電流波形で、CH2がコイルの電圧波形となる。
ここではCH1の電流波形に注目してみる。


電源電圧7Vのときに、電流のピークは550mA程度だとわかる。


次は、電源電圧10Vなので3Vアップしているのだが、電流のピークは550mA程度で上の画像と同じ。しかも、電流波形がとてもスリムになっていることがわかる。

概算で、
上の消費電力は、7[V]*0.55[A]*0.393[%]*0.5=0.756[W]
下の消費電力は、10[V]*0.55[A]*0.2[%]*0.5=0.55[W]
(山の部分をざっと直角三角形として最後に0.5をかけている。波形が異なるので精密に積分すると違いができかもしれないが、誤差の範囲としている。)

電圧が上がっていて、回転数も上がっているのに、30%程度消費電力が減ったのである。
もちろん、7V時の電流波形は無駄が多いのでデューティー比などもう少し改善すればこの差は小さくなるかもしれない。

しかし、実験を繰り返していて分かったのは、電源電圧が7Vを超えて、10V以上にならないと電流が顕著に減らないということである。

また、リミットスイッチの位置をコイルの電流が0近くになるように最適化していくと、回転力がなくなり、空気抵抗や軸受けの抵抗などでどんどん速度が低下してくる。だから、極わずかでも電流が流れるようにしなければならないことも分かった。



2016年6月5日日曜日

ローターの材質をアルミからPLA樹脂に交換した

先日、当ブログでアルミ板を使うべきではないと書いた。
そういうことで、3Dプリンターで出力することにした。
PLA樹脂(ポリ乳酸)というのは、植物由来のプラスチックで土に埋めると分解するものらしい。


直径160ミリのローターは3Dプリンターではプリントできないので、軸部分と板部分に分けて、さらに板を4分割出力し、ネジ止めすることにした。


このようにマグネットを内部に組み込ませるようにしてみた。
印刷できる大きさに制限はあるものの、このように希望したとおりに作れるのが3Dプリンターの強み。


何れリードスイッチからフォトマイクロセンサーに交換できるように軸裏面側にも細工をしておいた。



2016年6月4日土曜日

コイル改の結果

巻数の多いコイルに交換したら、電流が驚くほど少なくなった。それと同時に回転速度は少し下がった。


1.BEMF利用なし


まず、BEMF利用のためのコンデンサーがない状態から比較する。

以前は、電源電圧7Vでピーク電流が8.4A、周期が40msだった。
今回は、同じ電源電圧7Vで、ピーク電流が0.5A、周期は49msとなった。

次の画像は、電源電圧10V時のものだが、CH2のコイル電圧に注目。
コイルのスイッチがONになる直前の盛り上がりがより鮮明に現れるようになったのが分かる。



2.BEMF利用あり


次は、BEMF利用のためのコンデンサーをつけた状態。

以前は、電源電圧7Vでピーク電流が8A、周期は35msだった。
今回は、電源電圧7Vでも、ピーク電流が0.48A、周期は46msとなった。


画像は、電源電圧10V時のもの。
BEMF再利用している分、同じ電源電圧でも電流、周期ともにパフォーマンスは良い。


3.結論

当初予想した以上に、コイルの電流が減った。この結果からパルスモーターではコイルの巻数を増やすのが良いという話はとても大切だと分かった。電流が小さくなるということは効率が良いことでもあり、その先のオーバーユニティの可能性が見えてきそうなものでもある。

速度低下も予想していたのだが、速度(周期)自体はDuty比に左右されやすい要素でもあるのでコイル巻数による比較はとても難しいと思う。

これまでの実験を通して感じたのは、普通のモーターと同じように、このパルスモーターにおいてもコイルの大きさや巻数、マグネットの強さなどはパラメーターで、これらを色々変えていくことで希望する特性を持ったモーターを作り上げるものなのだということ。つまり、作ろうとするモーターの特性予測がわりと可能なのではないかと思う。

その中で、例えばBEMF再利用のためにコンデンサを追加する等のいままで無かった機能を付加していくことだけが未知のものをつくりだしていくんだなということ。

それから、正確なデータとして記録していないが、電源電圧を上げていくとBEMFはコイルに投入されたエネルギー量によって変わってくるからどんどん大きくなっていくのだが、8V以上になっていくと、大きさに変化がみられなくなるようだった。
そこから多分、コイルに蓄えられるエネルギーがある一定のところで限界に達するのではないかと思った。



パルスモーターのコイル巻数を増やしてみる

パルスモーターのコイルは巻数が多いほうが良いという話があるのだが、それを確認するために巻数の多いものに交換してみた。

これまでの実験で使っていたコイルは110回巻だったが、それを800回巻に増やす。この結果どうなるかを確認してみる。この800回巻コイルは、もともとSQMの実験用に作ってあったのだが、今回再利用することにした。




コイルの巻数が増えたと同時に、直径は30ミリから50ミリにアップ、コイル長さは30ミリから20ミリになり、平たくて大きなコイルになった。平たいほど、マグネットとの間に影響を与えやすくなるはず。

だから、磁石の回転による発電作用が大きくなり、コイル電流が減少すると思われる。


パルスモーターのコイル巻数を増やしてみる